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「うちは、親子でチューリップが好きなの。ほら、サキちゃんの幼稚園の通学バックも。」
「そういえば、大きなチューリップがプリントされてましたね。」
カズトは、サキちゃんがお気に入りでいつも持っているバックを思い出した。
黄色や、赤い色のチューリップの花が布で形づくられており、
そのまわりには、ちょうちょが飛んでいる。なかなかの力作だ。
「あれ、わたしが縫ってあげたのよ。」
すごいでしょ、といわんばかりの、その誇らしげなその表情が、
いつもとどこか違っているような気がしてカズトは、おや、と思った。
普段のサキちゃんといるときの母親の顔ではなく、今日はどこか子供っぽささえ感じられた。
「昔ね。」
と、徳香は続けた。
「小さい頃、チューリップの絵を、母親にほめられたの。それがすごく嬉しくって。」
画用紙いっぱいにクレヨンでかかれた、色とりどりのチューリップ。
「だから、わたしはチューリップが大好きなのよ。」
今思えば、それは子供らしく不格好な絵で、説明されなければ、どれが太陽で、
どれが花で、どれが雲なのか、よくわからないような、ごくありふれた幼い絵だった。
それを母は、「すごく上手。のりちゃんは天才ね。」と、満面の笑みでほめてくれたのだ。 |