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「七々海さん。どうしたの?今日はなんだか元気がないね。」
マスターの心配も無理はなかった。
記念すべき今年初めてのお客は、七々海といういつも快活で話題が豊富な女性で、
ときに、話のおもしろさにマスターとカズトは笑いすぎて困るほどだというのに、
今日はあまり言葉を発せず、どこか暗く沈んでいるのだ。
「でしょ。だって、そう言ってほしくって、元気ないようにしてるんだもん。」
覇気のない返事の中にも、いつもの七々海らしいユーモアが少しだけ含まれていた。
「ねえ、カズトくん。」
「はい?」
「なにがあったの、って聞いてくれる?それもおもいっきり心配しているって感じで。」
七々海はなにか楽しいことを期待しているような、変な注文をしてきた。
「七々海さーん!元気ないじゃないですか。何かあったんですか?」
カズトはその要求に、大げさな芝居じみた手振りを加え、せいいっぱい応えたが、
七々海はとくにそのことを批評することもなく、淡々と語りだしたので、耳が赤くなってしまった。
「去年の最後の日にね。長かったひとつの恋を、ぱちっと終わらせたの。」
言いながら七々海は握っていた手を、ぱっとひらいた。その動作がマスターには、潔く悲しくうつった。
「だから、たとえ新年といえ、こんなときは暗ーく元気ないようにしてたほうがいいでしょ。」 |