vol.8 夕子(ゆうこ)の場合
「このあいだね、大学時代入っていたサークルの同窓会に、はじめて行ってきちゃったの。」
夕子は、かつて青春をともにした仲間たちと、約10年ぶりに会ったことを、
まるでちょっとしたミスを恥じいるような言い方で、カウンターの中のマスターに報告した。
「サークルって、何のサークルに入っていたの?」
いつものように、さらっと穏やかな調子でマスターがたずねた。
「写真サークルよ。全部で2〜30人はいたんだけど、みんなもう、ぜんぜん真面目じゃなくってね。
写真を撮りに行く、という大義名分をたてては、みんなで旅行ばっかりしてたわ。」
どちらかというと、人との会話では聞き役が多い夕子だが、ここスープ・ダイナーでは
リラックスして自分の話をすることができるから、不思議だなといつも思う。
「やっぱりいつの時代も大学生なんて、そんなもんですよね。ちょっと安心しました。」
現役大学生のカズトが、その年齢らしい、哀愁とは無縁そうな笑顔で言った。
「でもね、中に一人だけ、本当に写真を撮ることに真剣な男の人がいたのよ。
ま、それはわたしがその当時、付き合っていた人なんだけど。」
なにをするにも真剣な人で、彼の自分への愛し方も真面目そのものだった。
「え!その人は同窓会にきたんですか?」
カズトの目は好奇心できらきらと輝いていた。
「ええ、きたわよ。あの人、毎年きちんと同窓会に顔を出していたの。そういう人なのよ。」 |