|
「これから孫に会いにいくんです。」
かきあげた地図を丁寧にたたみながら、はずんだ声で彼女はいった。
「彼氏ができたよって手紙をくれたんで、おめでとうって言ってあげたくて。」
ここで自分がお店をやっていなかったら、こんな素敵な人に出会うことはなかっただろう。
それだけでこれまでの不安がすべて、なんでもないことのように思えた。
「ぼくからも、おめでとうと言っておいてください。」
「ありがとう。伝えておきますよ。ここにこんなすてきなお店があるということもね。」
そうして彼女はスープの名前はよくわからないから、と前おきをしてこんな注文をした。
「あまくてあったかいスープをいただけますか。」
あの日以来、人生を素敵に楽しんでいる彼女のように、
自分もいろんなお客との出会いを楽しめばいいんだ、と思うようになった。
お客さんに、あったかい気持ちになってもらえるスープが出せればそれでいい。
すると不思議なことに、徐々に客もふえていった。
さて、今はひとりの時間を楽しもう。あの日彼女が、
北海道の味ね、といって喜んでくれたコーンポタージュでも飲みながら。
END.
|