vol.3 常連客 ユリ子の場合 「あまりにもあっけなくて。普通、父親って娘の結婚に反対するものじゃない?」
自分でも子供っぽい感情だということはわかっている。
実際、反対されたらそれはそれで困るのだが。でも。それでも。
「私がお嫁にいっちゃうこと、お父さんは全然平気なのかなと思うと
手紙もなんて書いたらいいのかわからなくなっちゃって。」
わたしはこんなに寂しいのに、と言って普段見せない表情をするユリ子に、
少し驚いたカズトは、おもわず目をそらせた。
「平気だなんて。そんなことは絶対にないですよ、ユリ子さん。」
「そうかしら。」
「人の心はそんなにシンプルじゃない。コンソメスープと一緒ですよ。」
「口にはしなくても、きっとお父さんも寂しいと思っていますよ。
男親というのは、そういうことは恥ずかしくて言えないものです。」
いろいろな感情を心にしまって、笑顔で「おめでとう」と言ってくれた父親。
それを思うと、ユリ子は目の奥があつくなった。 |