welcome to soup diner

vol.2 常連客 圭子(けいこ)の場合

「お客さんは結構きてくれるんですか?」
「うーん。なにしろ小さいお店だし、場所も裏通りにあるから。そんなに多くないわね。
でも、そのおかげで毎日、その日きてくれたお客さんの顔を思い出すことができるの。」
バッグを手にとり、あーでもないこーでもないと楽しげに
ずっとおしゃべりをしていた女の子たち、
小さな子供の面倒を上手にみながら、その子のために1つ買ってくれた若いお母さん、
買いにくるというより、世間話をしにきているといった感じの近所のおばあちゃん。
自分の家族の他にも、人をこんなにいとおしいと思うことがあるのだと、思った。

「お店をやってなかったら、絶対わからなかったことだわ。」
「いろんな人と出会うと、気づくことってありますよね。」
「それと最近、もう1つ新しく発見したことがあるの。」
「なんですか?」
「うちの旦那、実は結構料理をするのが好きみたいなのよ。」
「へー。あのお仕事人間の旦那さんが?」
「ええ。最近、私が忙しそうにしてるからちょっと手伝ってくれるようになったんだけど
野菜を切りながら、小さい声で鼻歌なんか歌っているのよ。」
それは、夫婦になって16年目の新たな嬉しい発見だった。



「まだまだ手際がよいとはいえないから、材料が半端にあまっちゃったりするんだけど。」
不器用に包丁をにぎる旦那の姿を思い出しクスクスと笑った。
「そんなときにとってもぴったりなスープがありますよ。」
「なんですか?マスター。」
「ミネストローネですよ。」

浅川マスターのスープなるほどコネタ

「いいこと聞いちゃったわ。今度早速つくってみるわね。」
「野菜もたっぷり入っているからのびざかりの健太くんにもぴったりですよ。」
「ほんとうにそうね。ありがとう、マスター。」
「それでは、本日のご注文は?」
「ええ、もちろん。ミネストローネをお願いします。」

マスターが、具沢山の赤いスープがはいった大鍋を温めはじめた。
しだいにたちのぼってくる柔らかい湯気を見ながら、
自分のお店もこの「スープ・ダイナー」のように
いつでもあたたかさを感じられる、そんなお店にしようと圭子は思った。


END.


前のページ  ←キャンベル「ミネストローネ」のページ  

Soup Dinner Topへ戻る  
welcome to soup dinner キャンベルホームへ