vol.2 常連客 圭子(けいこ)の場合
キレイな色のフェルト生地に、いろんな模様がプリントされている手提げバッグ。
それが圭子の小さなお店の商品だ。手作りなので1ヶ月に10個製作できればいいほうで
売上もほとんどないようなものだが、
それでも商品が売れたときにはこのうえない充実感を感じる。
それは10年前、息子の健太が誕生したときの気持ちと似ていた。
「このあいだなんかね。キャリアーウーマンっぽい女性が買ってくれたんだけど、
ちょうどこんなノートパソコンを入れるバッグがほしかった、って言ってくれたの。」
「確かに圭子さんのバックは、いろんなシーンで使えそうだけど。ノートパソコンとは。」
「もとは健太のお弁当入れだったのにね。ふふっ」
カウンターにひじをついてほんとうに嬉しそうに話す圭子に、
マスターもアルバイトのカズトも思わず笑顔になる。
もともと手先が器用な圭子が息子のために作った、手作りお弁当手提げバッグ。
ある日、それを見た息子の友達のお母さんの一人に
自分の子供の分も作ってほしいと頼まれたことがお店をはじめるきっかけだった。
「健太のお友達10人くらいに作ってあげたときかな。旦那が思いがけないことを言ったの」
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